人に学びて、自然とともに生きる

Never stop exploring, Keep your curiosity fresh

鷺沢萌 「君はこの国を好きか」

leave a comment »

鷺沢萌「君はこの国を好きか」を読んだ。留学先のアメリカで「ハングルに感電」した在日韓国人三世のアミが、韓国へ留学し韓国の文化、人々の習慣に拒食症になるほどの葛藤を抱えながらも、修士課程をやり遂げるまでを描いた作品。

情景描写の隙間すきまに、自分のアイデンティティを模索する著者の苦悩が浮かんでくる。その一行一行が、韓国で自分の心に刻まれた傷の一つ一つをなぞるような苦しみとともに綴られたのだろう。

税金は納めているのに選挙権は与えられず、在日外国人として不便、不利、差別を受けて日本で育った。日本に言いたいことは、もちろん山ほどある。日本にやってもらいたいことも、山ほどある。それでも在日僑胞が日本に帰って「やっぱりいい国だよね」と言うのは、日本で生まれ育っているからなのだ。

日本にいても日本人扱いされず、韓国にいても韓国人扱いされない。日本にも裏切られ、韓国でも裏切られる。裏切りの連鎖。果たして自分は何者なのか。この苦悩は最近僕が読んできた満州育ちの日本人に近いものがあるだろう。

「やっと宿題を終えた」著者はあとがきでそう語っている。この主題を書くために作家になった、そう言えるだけの満足感があったのだろう。三島由紀夫の「豊饒の海」しかり、太宰の「人間失格」しかり。そういう意味では人生の主題を書けぬまま、自分が生まれてきた意味を分からぬまま死を迎える人間が多い中、彼女は幸せな作家、そして人間だったのではないか。そう思う。少なくとも、やり残したことはない。そう死んでいったのだと。

果たして自分は何者なのだろう。何のために生まれてきたのだろう。僕も10代後半から23くらいまでそのことばかり考えていたことがあった。「なんでこんな嫌なことばかりなのに、ここにいるんだろう。でも感電したんだ、だから頑張らなきゃ」在日三世として韓国で勉強していたという立場は違うけれど、中国でもがいていたころの自分と重なった。

彼女の人生が凝縮されている作品。ぜひご一読を。

君はこの国を好きか (新潮文庫)
鷺沢 萠
新潮社
売り上げランキング: 533882

Written by shunsuke

2006年5月29日 @ 9:20 PM

カテゴリー:

Tagged with

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中