人に学びて、自然とともに生きる

Never stop exploring, Keep your curiosity fresh

アラブの世界で何が起きているのだろうか?

with 4 comments

No one pretends that democracy is perfect or all-wise. Indeed, it has been said that democracy is the worst form of government except all those other forms that have been tried from time to time.

民主主義が完全で賢明であると見せかけることは誰にも出来ない。実際のところ、民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが。63年前、1947年のウィンストン・チャーチルの言葉。大学時代の国際政治の授業で聞いたそんな言葉を、ここ最近の報道で思い出した。

2010年12月17日、チュニジア南部の小都市シーディー・ブーゼイド(Sidi Bouzid)で、野菜を露店で売って家族を支えていたムハンマド・ブーアズィーズィー(Muhammad Bu Azizi)という26歳の青年が、無許可販売の摘発で受けた屈辱に抗議して、市役所の前で焼身自殺した。この出来事がチュニジア全国で、そして北アフリカや中東のアラブ諸国全体で注目を集め、デモを惹起した。その後2011年1月14日のベンアリー政権の国外逃亡によってあっけなくチュニジアの政権は崩壊した。

そしてそのチュニジアの政変以来、アルジェリアやイエメン、エジプトなどアラブ各国で現政権に対するデモが相次いでいる。エジプトは30年にわたりムバラク大統領が国を率いてきた独裁政権の国。やっていることに差がありはするけれど、政治体制としては「人権を脅かしている」とアメリカに指摘されている北朝鮮やイラン、中国と対して変わりははしない。

そんな場所で国民が政治に不満を表面に出し始め、デモが相次ぎ政治体制にほころびが出始めている。インターネットと携帯電話が普及する前、独裁政権はマスメディアをコントロールしていればそれで問題なかった。自分たちに不都合なテレビ番組は許可せず、自分たちの批判をした編集長はクビにすれば国民に対する情報をコントロールすることができた。

今は違う。政府が新聞やテレビをコントロールしても携帯電話のショートメールでカイロの町のタフリール広場の前でエジプトの誇りエルバラダエイ氏がデモに参加していることを隠すことができない。どれだけ中国共産党がGreat Firewallをで防いだところで、人民は他の国のVPNを通じてfecebookやyoutubeにアクセスをし、ウルムチで起きていることをリアルタイムで知ることになる。

インターネットと携帯電話は世界の前提を大きく揺さぶっている。もしかしたら、これが「ウェブでの民主主義」を理念のひとつとしてきたGoogleが目指した世界なのかもしれない。Google創業者の一人Sergey Brin氏は、6歳近くまで全体主義体制が敷かれたソビエト連邦で、政治的な発言が検閲される中で過ごした日々が今のGoogleの信念に大きく影響を及ぼしていると語っている。

これってこれまで世界中のいたるところであまたのように繰り返された革命とは一線を画すもののような気がする。米ソ冷戦時代に起こったイデオロギーに基づいて両大国が裏で手を引いていたものではなく、資源分配など利益集団の衝突によってもたらされたものでもない。おそらく裏にそれぞれの意図はあるものの、多くの民衆が自発的に情報を共有し起こした行動だからだ。

世の中を変えるには政治家になるよりGoogleに入ったほうがいい。

いや、それよりもweblogなりfacebookなりで自らのメッセージを発信するのがいい。

ウェブの世界では誰もがメッセージを発信できて、誰もがリーダーになることができる。そして今、そのウェブの世界が現実の政治に大きな影響を与え始めた。人々の琴線に触れるメッセージを発信し続けて、それをネットワークに乗せ共有することができれば、人を動かし大統領は亡命するのだ。これを民主主義といわずして何と言おう。

いつも強引に中国ネタになってしまうのだけど、この状況を世界のどの国よりも危機感を持って見守っているのが中国なんじゃないかと個人的には思ってる。独裁政権の腐敗と若者の高失業率、格差の拡大。今回一連のデモの原因と言われている状況をそれよりも大きな規模で内包しているからだ。そして、いったん火がついたものをコントロールすることが難しいことを彼らは身をもって知っているはず。1989年にね。

率直なところ、今このタイミングでこの北アフリカの動きが中国に飛び火することは可能性が低いとは思う。だけど、今の中国の政治経済システムと社会の状況は許容範囲を超えている。去年中ごろから顕著になっている食品の高騰とかがきっかけとなって何かが起こっても不思議じゃない。親戚の党幹部から情報を得て不動産で設けてきた中国全土の李剛たちはびくびくしているに違いない。

「インターネット上での動きはなんとか人を動員すればチェックすることができる。だけど携帯のショートメールでリアルな関係性を通じてデモの情報が流れたらチェックすることができない」尖閣問題で各地で反日デモが行われていた去年の10月、1年で最大のイベントを前に広西自治区の党委員会の人間がこんなことを漏らしていたのが印象に残っている。日本では官製デモなどと呼ばれていたけれど、実際にそれほどコントロールが可能なわけでもない。上海など大都市で起きなかったのは、ただ財布も心も比較的満たされている人が多いのと、警備が厳しかったことが理由だろう。

今の中国にとってお金がすべの判断基準だ。改革開放以来、金を持つことに国はすべてを注ぎ、国民を豊かにすることだけが共産党にとっての存在意義だった。ある程度お金を持った中国の人たちにとって、お金がすべてであればいいのか。それよりも、お金よりも中華としての尊厳、国や民族のあり方を考えるのか。改革開放政策が始まって32年、多くのアラブの国同様に政治体制が耐用年数を過ぎていると考えるのは僕だけじゃないはずだ。

エジプトの今後がどうなるかは僕にはわからない。アメリカの中東における代弁者、ムバラク大統領がアメリカという国のPrincipleである民主主義と、アメリカから生まれた情報技術によって駆逐されていくのであれば皮肉な話だ。もしかしたら100年後には新たな民主主義の形を生み出したとして、歴史に刻まれることになるのかもしれない。

人ごとっぽくなってしまうのだけど、こうして世界が変わっていく瞬間に立ち会っているのは面白いよね。そして、僕らはfacebookやtwitterを通じてカイロの街角でデモに加わった人たちの本音を知ることができる。すごい世の中になったなあ。

広告

Written by shunsuke

2011年1月29日 @ 1:23 AM

コメント / トラックバック4件

Subscribe to comments with RSS.

  1. >世の中を変えるには政治家になるよりGoogleに入ったほうがいい。
    意図した変わり方になるかはかなり疑問だけど、ここまでInternetを意識させられたことはなかったし、この表現は端的に真実な気がする。
    どんなもんか、とFacebookのアラブ系のページをたどってみて、これは情報の規制とか、統制は無理だろうな、と思うにいたった。関係もほぼリアルでありながら、情報も同レベルにリアルなのだろうと。そしてこの文章を読んでいます。

    ahya

    2011年1月29日 at 9:27 AM

    • > ahyaさん

      コメントありがとうございます。「関係もほぼリアルでありながら情報も同レベルにリアル」
      これまでウェブ上での情報や関係性がここまでダイレクトにリアルな世界に結びつくことはなかったですよね。
      ウェブ上とリアルの世界の距離がSNSなどの深化によって急激に縮まって、歴史の1ページが開かれたのかなと感じています。
      そして、カイロでデモを行っているような人々は自分たちが持つ力に気がつき始めている。
      でも、これって考えてみたらものすごく怖いこと。だって、誰もが効果的な手段さえ使えば大衆を扇動できるんですもの。
      このことに気がついている人も多いと思います。今後も目が離せませんね。

      shunsuke

      2011年1月29日 at 3:27 PM

  2. 非常に興味深い内容で面白かったです。
    無料でこういう文章を読めると、ジャーナリズムの存在意義が問われますね・・・
    ただいろんな人が意見を言える場であるからこそ大衆扇動は難しいのかな・・・
    また飲みにいきましょう!!

    ねぎ

    2011年2月13日 at 10:49 AM

    • > negi
      一番の大きな変化は新聞や出版社でなくても、誰もが情報の発信者となったことなんだと思う。
      そして言葉と手段次第で誰もがオピニオンリーダーになれ、時には世界を変えることのできる力を持てるようにもなったってことなんだよね。
      お互い自分の言葉を持っていたいね。

      shunsuke

      2011年2月17日 at 11:10 PM


コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。