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DAY6: てっぺんから朝日を見たら涙が止まらなかった

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Climbing day 5: Barafu Camp(4,670m) -Uhuru Peak(5,895m) – Mweka Camp(3,100m) 22km

頂上アタックの日、23:00にシュラフを抜け出し準備にとりかかる。結局この日もほとんど寝ることはできなかった。これで三日連続。それでも頂上アタックへの高揚感か不思議と高山病の症状もなく疲労もほとんど感じない。待ちに待ったアタックを前にして身体の中からエネルギーが湧き出てくるような感覚だ。

「23:00に朝食のビスケットを運ぶよ」と言っていたアシスタントガイドのNikkiは結局23:40にやってきた。こんな大事な日に、と思ったけどポレポレの国だから仕方ない。口に出すとそれがパーティの雰囲気にもつながってしまうこともあるので、ここは言いたいことをこらえて飲み込んだ。この日は頂上まで登った後さらに3,100mくらいのところまで下りる長丁場、朝ごはんはしっかり食べておかないと。

0:10にようやくパーティ全員の準備が終わり出発。今思えばここでアタック前の記念写真でも撮っておけばよかったけど、実のところそんな余裕はなかった。パーティの調子はMarcoを除いて相変わらず万全じゃない。特にMarkusは咳が出始めていて風邪の具合いが悪化しているようだ。

僕らは4,670mのBarafu Campからキリマンジャロ・キボ峰のMachame Routeにある外輪、5,745mのStella Pointを目指す。頂上まで登ってそこから下りてくることを考えると、登るのにあまり時間をかけすぎることはできない。

月明かりが照らす岩と砂利の道をヘッドライトを頼りにして登っていく。登り始めた時から喘息持ちのKarinのペースが上がらずに、僕らは彼女のペースに合わせてゆっくり登っていく。僕自身の体調はかなりいい。ボリビアのワイナポトシの時よりも呼吸も楽で、ほとんど息が乱れない。Marcoとの間ではジョークを交わす余裕もあるくらいだ。

登り始めて2時間弱が経った2時頃、5,000mを突破。途中5分ほどの休憩をはさんで二時間弱で300m、最初考えていたペースよりもかなり遅い。日の出は6時前後。それを考えると頂上から日の出を見るにはあと800mを4時間で登る必要がある。

どうしても頂上から日の出を見たい僕としては少し焦るけれど、ここまで一緒に登ってきたパーティの仲間と一緒に頂上に登ることほうが大切だ。2時30頃、Markusがリタイア。かなり風邪の症状が悪化しているらしく彼自身の判断でリタイアを決断したようだ。「これより高く登って動けなくなる可能性を考えるとここでリタイアするよ」咳をすることで相当量の酸素と体力が失われていく。5,000mを超えた場所でのその消耗は相当なものだったと思う。残念だけど彼の咳の具合いを考えると賢明な判断だった。

5,000mを過ぎた頃からKarinの足取りは更に重くなった。時計が3:00を指した時点で5,130m。ここ一時間で130mしか高度を稼げていないことになる。呼吸がぜいぜい言っているのが後ろを歩いている僕まで聞こえてきて、こちらが気の毒になってくるくらいだ。それでも歩みを止めないKarin、その根性はすごい。

3:30、5,200mの地点でとうとうKarinが歩けなくなった。「Liseも高山病の症状が相当ひどいから私と彼女はJohnとゆっくり頂上を目指すわ。あなたとMarkusは二人で頂上を目指して」仲間からのその言葉を聞き、僕とMarcoそしてガイドのLarahaの三人で先に頂上を目指すことになった。

Stella Pointまではおよそ550m、アタック開始時には5人のメンバーに3人のガイドがいたけれど、残っているのはもう3人。これまでのペースを取り戻すべく僕とMarcoはペースを上げて登っていく。ここまでくると僕とMarcoも会話をする余裕がない。何かを考える余裕すらない。ただ足を動かし、足を動かすために呼吸をする。

Karinたちと別れてから1時間、4:30に長めの休憩をとる。標高5,500m。1時間で300m稼いだことになる。これまでのペースの二倍。ザックを置いて岩に寄りかかると、これまで張り詰めていたものが切れたのかどっと疲れがでてきた。Marcoはまだ足取りもしっかりしているし、呼吸にも余裕があるけれど正直なところ僕には限界のペースだ。

そんな僕に気がついたのかLarahaがとっておきのものを出してくれた。ポットに入れた熱くて甘い紅茶。一口飲んだだけで、疲れと寒さで固まった体中の筋肉と心がほぐされていくように、体中に染み渡っていく。Larahaありがとう。なんかエネルギーが沸いてきたよ。紅茶と一緒に中国から持ってきたオレオでエネルギー補給。泣いても笑っても日の出まで1時間半。Marco、Laraha、残りの仲間の分まで登ろうぜ。

紅茶で復活したものの登り始めて10分もしないうちに言えようもない疲労感が襲ってきた。身体が重く足が進まない。そして猛烈に眠い。前を行くMarcoに遅れないよう気力を振り絞り足を進めていくけれど、ふと意識を失いそうになる。考えてみたら丸3日も眠れていないのだから当たり前だ。おい、俊介ここは気合いだ気合しかないだろ。そんなことを言い聞かせながら、何回か意識を失いそうになりながらも踏ん張りひたすら上を目指す。

そして5:30、とうとうStella Pointに到着。僕とMarcoもザックを投げるようにして下ろし、言葉にならない歓喜の言葉を叫びながら抱きあう。Marcoありがとう。Marcoがいなかったら僕も諦めていたかもしれない。一緒に登れたからここまで来れた。後ろを振り返るとちょうど月と同じ方角から空が明るみ始めていた。

これまで登ってきた道の向こう側から明るくなっていく空を見た瞬間、いろいろなものがこみ上げてきて思わず泣いてしまった。涙が一筋流れるとかではなくて号泣してしまった。なぜだかはよくわからない。キリマンジャロでここまでたどり着いた達成感だけでなくて、南寧で一年ちょっと孤独に耐えながら手探りで生きてきたこれまでの苦労が思い出されたのかもしれない。涙を流したらちょっと肩の荷が楽になった気がした。

15分ほど休み、キリマンジャロの最高地点Uhuru Peakに向けて歩く。もう頂上の一端には来ているので、富士山に例えるとお鉢めぐりみたいなものだ。6:00過ぎに朝日がようやく顔を出した。

横を見ると氷河が朝日に輝いてキラキラ光っていた。150年前はそのほとんどが厚い氷に覆われていたキリマンジャロの頂上も、今では部分的に氷河が残るだけになっている。

氷河の近くを歩いていると数分置きにピシピシッと大きな音が聞こえてくる。Larahaによると、氷河が進んだり、溶ける時にこの音が聞こえてくるんだそう。このペースで氷解が進めば2020年にはキリマンジャロから氷河がなくなってしまう可能性が高いとか。今数mあるこの氷河もなくなってしまうのか。メルー山をバックにした氷がきれいだった。

6:43、出発から6時間半かけてUhuru Peakに到着。よく見るこの頂上の看板の前でMarcoと一緒に記念撮影。下のほうに誰かが持ってきたのかタルチョがかけられてあった。

Uhuru Peakからクレーターを見下ろすと溶け残った雪がポツンと残っていた。ちょっとさびしそう。スキーヤーの三浦豪太さんは30年前にこのクレーターをスキーで降りていったらしい。今ではどこにもそんなことができる場所がありそうにない。

僕もMarcoもかなり疲れていたので名残惜しい気持ちを振り払って10分ほどでUhuru Peakをあとにする。さっきまで登ってきた石と砂利に覆われた外輪山の道を一歩一歩思い出に刻むように下っていく。このあたりの様子は富士山の頂上にそっくりだ。

30分ほどかけてStella Pointまで戻る。そこで最後になったクッキーをおなかの中に入れ、Barafu Campまで1,000mの道のりを下っていく。あれだけ辛かった道のりも下りは楽勝。砂走りの要領でサンドスキーをするみたいに駆け下りる。同じ道なんだけど、登ったときは真っ暗だったので周りを見ていないので全く別の道を歩いているみたいに楽しむことができるのはいいね。

MarcoとLarah、二人とも下りは楽しそう。それにしても空が青い。

9:00、5時間かけて登った道を1時間半で下りきってBarafu Campに到着。ひとまずすべてをほっぽりだし、テントに入って横になる。もう体力もひざもすべてが限界!

昼過ぎ、Larahaに起こされ目が覚める。他のテントを除くとKarinだけがいた。彼女とLiseは5,600mくらいのところで朝を迎え引き帰してきたとのこと。そしてLiseの具合が悪化したのでLiseとMarkusは今日中にふもとまで下ったらしい。僕と一緒に到着したMarcoもそれを聞いて一緒に麓まで向かったようだ。Marco、お前すごすぎるよ。

からっぽになった胃袋にひさしぶりの温かいご飯を流し込み、12:30Barafu Campを出発。Karinのペースにあわせるようにゆっくりゆっくり下っていく。

3時間かけて3,100mのMweka Campに到着。まるで口元が勝手ににやけてくるような登頂を果たした充実感と、いろいろな荷が下りたような安堵感、そして猛烈な疲労に襲われて食事をとってすぐに寝てしまった。長い一日だった。

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Written by shunsuke

2011年3月6日 @ 10:56 PM

カテゴリー: 2010/10 Kilimanjaro

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コメント / トラックバック4件

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  1. なんか、心ががくがくする感動を覚えた。山の上の光景って、やっぱりいいね!

    チョロスキー

    2011年3月7日 at 7:38 AM

    • チョロさん、コメントありがとうございます!山の上いいですよね。下手な言葉なんていらない圧倒的な感じがいいんです。いつか山登りにいきましょうね!

      shunsuke

      2011年3月9日 at 7:19 AM

  2. ¡Felicidades!
    富士山も登ったことがない私には想像も追いつかないと思うけど、素晴らしかった!
    苦しみのあとの泣いてしまうほどの感動。(ほかにもっと的確な言葉が無いかな。)
    明るんでいく稜線。下にどこまでも連なる山並みに、氷河の青。
    これだから、山を知る人は登らずにいられないんですね。

    体験のおすそ分けを、本当にありがとう。

    Herry

    2011年3月9日 at 7:01 AM

    • Herryさん、富士山も高尾山もキリマンジャロも多少高さが違うだけでプロセスは同じなのかなーと思います。最近は年々涙もろくなっている自分を実感しますね(笑)山は僕も時々なんで登っているのかな?と自問自答してしまうこともありますが、頂上に登るとすべてが報われる、その感覚が好きなのかもしれません。

      shunsuke

      2011年3月9日 at 7:23 AM


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