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銀座で過ごした震災の夜

with 6 comments

金曜の午後、僕は少し高揚状態だった。

金曜の夜便で香港へ行き週末は旧友と香港でリラックスするために、先週からかなり力を入れてきた報告が午後一番で完了したところだった。すべてはスムーズに退社するために、そのために今週は全力を尽くしてきた。

報告が終わり、次の月曜からは一週間出張でいなくなるので、その作業にとりかかろうとしたところ、地震はやってきた。最初は小刻みに震えだして、そのあと縦ゆれがやってきた。そして数十秒後には横揺れが始まった。

ビルの11階にあるオフィスは2階から4階がコンサートホールになっていることもあり、通常のビルの15階くらいの高さにある。その高さもあってか、揺れはものすごくてとても仕事は続けてられず部署のみんなで机の下にもぐりこんだ。横揺れでグラグラと揺れるビル、きしむ天井。このままポキッて折れちゃうよ!とみんなで叫びながら揺れが収まるのを待った。デスクから落ちるファイル、ガシャーンと棚の上から落ちて壊れる地球儀。被災地の方からすると大げさかもしれないけど、このまま死ぬのかなとちょっぴり死を覚悟した。

数分してようやく揺れが収まり立ち上がる。ビルのせいか揺れが収まっても建物はしばらくグラグラと揺れていて、まるで荒れた海の中を航海している船に乗っているようだった。ああ、助かったとほっとしてテレビをつけてみる。震源地を聞いたとたん、東京でこの揺れなのだから東北は大変なことになっているだろうとある程度の察しはついた。

ふと我に返り、フライトの時間を確認する。フライトは18時40分、16時過ぎにはオフィスを出ないと間に合わない。「電車止まってるだろ」と同僚から言われながらも、とりあえず成田空港に向かおうと余震で小刻みに揺れるオフィスを後にしてまずは銀座線で上野まで向かおうとする。もちろんオフィスのエレベータは止まっており、スーツケースを持ちながら長い道のりを下り3分くらいかけてようやく地上にたどり着く。

銀座の町は思ったより人通りが少なかった。松屋から地下に下りてみると案の定銀座線はストップ、どうやら東京メトロは全線止まっているらしい。気を取り直して1kmほど離れた東京駅まで行ってみる。道中時々すれ違う救急車以外は普段と変わらない町並、ただ東京駅に近づくにつれ人が多くなり、最後はスーツケースを引いて歩くのが困難になるくらいだった。

たどり着いた東京駅は入り口のガラス戸が閉められ一般人は立ち入り禁止。空港までのバスも全線ストップ。成田に向かうのは諦めてまだ営業していたサンマルクカフェに寄ってパンを大量に買ってオフィスに戻る。東京でもすごい揺れで交通機関がすべてストップしていたのにも関わらず、通行人もお店の人たちも怒号をあげることなくいつもの街の姿があったのが印象的だった。写真は扉が閉ざされた東京駅。

オフィスに戻り成田空港も閉鎖されたことを知る。今考えてみると電車動いているわけないのだけど、その時はとにかく空港に向かうことに必死でそこまで頭が回っていなかった。もう仕事も手につかないので、同僚たちとテレビを見ながら津波被害のすさまじさを目の当たりにし、改めて地震の大きさに気づかされる。定時以降も交通機関が回復しないので、歩いて帰ることができる人(10kmくらい)以外は全社員待機の指令が出て、仕事しているのか時間をつぶしているのかわからないような時間が流れる。

18時には備蓄食料を配ります、との社内アナウンスが流れ皆で非常階段に並びバケツリレーで地下から食料と水を持ち上げる。配られた食べ物が乾パンだけだったので、その後食料探しに外へ出てみると、コンビニの水と食料はからっぽ。閉店間際の三越のデパ地下に行くと、まだまだパンと惣菜があったので大量に買い込み職場に持って帰る。やっぱりおなかがすくと気持ちもすさむから、こういう時こそ可能なかぎりおいしいものをみんなでシェアしないとね。乾パンと水しか配られなかったので、みんな喜んでくれたのがうれしかった。

三越は20時の閉店前後もまだ帰ることができないのか客がかなりいて、椅子に腰掛けていた。アナウンスによると帰ることができなくなった人たちのために8階かどこかを開放したらしい。隣にあるわがオフィスも立地としては最高なんだからホールや1階を開放すればよかったのに。そう思ったけど、企業としてはやりにくいか。

一向に解除されない待機命令。埋立地を走る京葉線は弱そうだし一晩過ごすことを覚悟する。とはいえやることも限られてくるので、上司や友人と打ち合わせ会社そばの雀荘へ行き朝までマージャンをやって過ごす。マージャンをやりながらも流されるニュースで克明になっていく甚大な被害状況。そして刻一刻とつみあがっていく僕のマージャンの負け金額。結局朝になった頃には、香港で遊ぶ予定だった金額と同じくらいの負け額がつみあがっていた。

被災地の人たちを考えると不謹慎かもしれない。だけど、帰る手段がなくて過ごさなきゃいけない一夜を過ごすには、10分ごとおきくらいに余震が続いてその度におびえるような夜を過ごすからには少しでも楽しく過ごすべきだと思った上での判断だった。判断は正しかったけど、捨てる牌は間違えたようだ。

翌朝、まだ動いていない京葉線を諦め、銀座線で上野まで出て京成線を使って千葉まで帰る。

形成上野駅では警察官と職員総出で乗車規制を行っていて、みんな一列に並んでいた。場所がら成田空港まで行く人も多く外国人も多い。そういう人には誰からともなく言葉を話せる人が通訳していた。

飛行機に間に合わせるために急いでいる人もいたと思う。だけどみんな譲り合いながら怒号が交わされることなく並んでいた光景を見て感動した。一つの目的を共有した時の日本人の団結力はすごい。大げさでもなんでもなく世界一だよ。

自己主張が少ないし、何を考えているのかわからない人も多いけど、日本人はすごいよ。マッカーサーが今日の光景を見たら『これがカミカゼを可能にした精神か』と恐れるはずだよ。僕はこの上野駅の光景を誇りに思う。

家には15時くらいに到着。今夜からは羽田発で出張なので、今からパッキングしなおして行ってきます。

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Written by shunsuke

2011年3月13日 @ 1:51 PM

コメント / トラックバック6件

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  1. 香港残念だったね。そして麻雀も…。
    食材シェア、いいことしたね。かっこいいじゃん。
    出張の飛行機はちゃんと飛んでくれるといいね。
    気をつけて行ってらっしゃいまし。

    ahya

    2011年3月13日 at 3:35 PM

    • > ahya
      気持ちが張り詰めれば張り詰めるほど雰囲気悪くなっちゃうじゃない?だから、こういう非常事態の時ほどせめて食べ物くらいはおいしいものを食べなきゃって思うんだよね。僕ができることはあれくらいしかなかったから、それで少しはチームに貢献できてよかったです。
      出張便は大勢の外国人退避客を乗せて無事飛びました。今は南国。帰るべきか躊躇します・・・

      shunsuke

      2011年3月17日 at 6:49 PM

  2. >一つの目的を共有した時の日本人の団結力はすごい。大げさでもなんでもなく世界一だよ。

    普段いがみ合っていたとしても、これが日本人の国民的資質だと思います。

    これから、国全体に長い試練がのしかかってくるのでしょうけど、この力で乗り越えていけるものと信じます。
    日本人は奇跡を起こすと信じましょう。

    Herry

    2011年3月14日 at 1:26 AM

    • > Herryさん
      人間って、実際に起こってみないとわからないことがたくさんあるんだなあと今回の件で改めて思いました。原発って、放射能が残るから何十年も廃棄できないんですよね。僕らの世代、僕らの子ども、孫の世代まで影響が及ぶ原発について、今表舞台でものごとを決めている老人だけで決定するような国であってはならない。そう強く思います。年金にせよ原発にせよ上の世代のツケを払うのはこりごりです。

      shunsuke

      2011年3月17日 at 6:59 PM

  3. 無事で何よりです!
    自分の家族や知り合いは絶対に大丈夫だって、揺るぎない自信が日を追う毎に揺らぎ始めていますが、無事は知っていました。
    NHKに釘付けしながら、焦燥感と胸がつまって泣きたくなる気持ちが日増しに増幅し、そのようにこの気持ちを処理したらいいのかがわからない。
    変な疎外感も味わいながら、ひたすら祈る日々です。

    日本の秩序の良さ、私も誇りに思います。
    こんなすばらしい国なのだから、きっと立ち直れるって信じて!

    suwabe

    2011年3月17日 at 1:03 PM

    • > suwabeさん
      コメントありがとうございます。今、僕も日本の外にいて「変な疎外感」を多少感じています。地震直後に日本を出る時は多少後ろめたい気持ちがあったものの、いざ原発の状態が深刻になってくると日本にいなくてよかったと思ったりもします。人間って弱いですね。自分にできることをしっかりとやっていくしかないのかなと、今はそう思います。

      shunsuke

      2011年3月17日 at 7:04 PM


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