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DAY3: ヌクス、禁じられたコレクション

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ウズベキスタン二日目、この日は朝一番の飛行機でタシケントからウルゲンチまで飛ぶ。すでに航空券は日本で購入していたので、朝5時半に起床し、タクシーで空港に向かう。チェックアウトがてらフロントでUSDから現地通貨のスムに両替してもらったら、1USD=2200スムだった。公定レートが1USD=1800なので、闇で両替したほうがかなりレートがいい。朝から陽気だったフロントのお兄ちゃんとタクシードライバー。うーん、朝から天気もいいし二人ともいいやつだったし、いいことがありそうだ。

そう思った瞬間、ホテルの部屋に携帯電話を忘れたことに気がついてあわててホテルへ戻る。何やってんだ。これまで何回携帯なくしたことか。この前の5月もブラジルで同じことやってタクシーでホテルまで戻っているし、進歩がない・・・

ともあれ無事に携帯も回収し、空港でチェックインをしていると、昨日北京空港のラウンジで見かけたナイスガイを見つけた。話しかけてみると、香港人で名前はチャールズ。女友達と二人で来ていて、なんと同じウルゲンチ行きでウルゲンチから200kmほどあるヌクスまで行く予定とのこと。僕はそのヌクスを経由してさらにその先にあるモイナックに行く予定だったのでちょうどいい。

ウズベキスタン航空の機体は予想外に真新しい。定刻どおり7時に離陸して1時間ほどで砂漠の中に開かれたオアシス都市、ウルゲンチの町並みが見えてきた。

ウルゲンチに到着後、ヌクスに向かうチャールズと話していると、なんとすでに香港から車を手配してあるとのこと。「よかったら乗ってく?」との言葉に甘えて、タシケントで働いていてロシア語堪能なTちゃんと一緒に4人でヌクスへ向かうことにした。

旅行会社を通しただけあって、車は立派なシボレー。チャールズと一緒に両替をしようとドライバーにレートを聞いたら、1USD=2400スムだった。どうやらこれが今では闇の平均的なレートらしい。

30分ほどウルゲンチから走ってアムダリヤ川を渡る。キルギスのパミール山脈の雪解け水を水源とする川で、ほとんど雨が降らないこの地域にとっては貴重な水源となっている大河。ただ、近年以前にもまして水量が減っているらしくドライバーのつぶやいた”Almost no water”が印象的だった。

ヌクスまでは2時間半ほどのドライブ。のども渇くだろうということで、道端でひと休憩。なんだかにぎやかだなあと思って降りてみるとメロン市場だった。今はメロンとスイカが季節、”気温40度以上湿度10%以下のこの地で育った果物は世界中で一番だ”と自慢げにおじちゃんがメロンを抱えて持ってきた。確かにうまそうだ。

どこから来たんだい?えっ?ヤポンスキ、フクシマ は大丈夫かい?こんな遠いところまでよく来た。たくさん食べていってくれ。とおもむろにメロンを切り出して僕らにすすめてきた。ありがたくがぶりつくと、想像以上の甘さ。まるで濃縮還元したメロンジュースのような甘さとおいしさだ。こりゃ、世界一もオーバーじゃない。チャールズもこんなメロンは初めて食べたとむしゃぶりつく。

一人3切れくらい食べてお金を払おうとすると、「何行ってんだ、こんな遠くまで来てくれたのに金なんて受け取れるか」と頑として受け取ってくれない。そうか、ありがたくご馳走になるよ。おっちゃん、ありがとう!

おなかも満たされ、車内でうとうととしている間にヌクスに到着。昼ごはんを食べようと入ったレストランで一枚の絵に釘付けとなった。絵になんの説明もないけれど、おそらくアラル海の漁の様子を描いた絵。1960年代まではこうしてアラル海でチョウザメをはじめとする漁が盛んに行われていた。

食後はヌクスのハイライト、ヌクスの博物館へ向かう。ここにはソ連時代に国から認められていなかった前衛アートを守るため買い集めた民俗学者サヴィツキーのコレクションが収蔵されている。

恥ずかしながら僕は、チャールズたちに言われるまでこの博物館の存在を知らなかった。写真撮影禁止の館内はここヌクスがあるカラカルパクスタン地域の歴史から、ウズベキスタンの絵画、ソ連時代にサヴィツキーが集めたコレクションまでそろっていて、ゆっくり1時間半見て回った。

ガイドの説明によると、ソ連時代には政治的に敏感だと認識されるような内容の絵画は、描いた画家はもちろん収蔵している人間も政治犯として逮捕される危険があったとのこと。その絵画を救うためにサヴィツキーは1950年代から60年代にソ連中を駆け回り、モスクワから遠く離れたここヌクスにひっそりとコレクションを集めていったらしい。命がけで彼が守った絵画たちがここにあるのだ。

どのような絵が政治的意図を持ったのかなんて個人の感覚でしかない。たとえばこの牛の絵はこの博物館でも目玉の絵なのだけれど、角が左右非対称なところとか、尻尾の先に太陽があることが共産主義の否定と受け取られたらしい。ほんっとにばかげているよね。人間の自由な発想を阻害する国家は衰退する。僕はそう思うよ。

見終わった後は、Tちゃんのガイドをしていたナルギーザとしばしおしゃべり。彼女によると、ここの絵画はフランスとかにも展覧会で持ち出されたりしているらしい。 だけどウズベキスタン国内の一自治共和国であるカラカルパクスタン共和国ではなかなか維持する予算もないらしく、今は維持するだけでも各国からの寄付に頼っている状態とか。いつか日本でも「禁じられたコレクション」みたいな題名でサヴィツキーコレクション展をしてくれないかな。そう思わせるくらい迫力のある絵画たちだった。

もともと僕はここからさらに200kmほど北西に行ったアラル海湖畔の街、モイナック(Moynaq)に行く予定だったのだけど、ここに来て博物館内の弱冷房による暑さで疲れてしまい、チャールズたちと一緒にヒヴァまで行くことにした。だってヌクスからタクシーチャーターしても100USDって、高いよね。みんな疲れたのか、ヒヴァまでの道は4人とも爆睡。

ヒヴァには午後4時半に到着。ここでチャールズ一行とウルゲンチの友人宅に泊まるTちゃんとお別れ。ヒヴァは19世紀中ごろまでヒヴァ=ハン国としてエミール(藩王)に統治されていたオアシス都市で、今でもその城壁と町並みがイチャン=カラ(内城)としてそのまま残っている。ヒヴァの中でも一番高い場所にあるイスラーム・ホジャ・ミナレットに登ると、ちょうど夕暮れ時を迎えた街が一望できた。

このミナレットのてっぺんからの風景をスケッチしていた女の子に遭遇。フレンチで、カメラは持たず心に残った風景と人々をモレスキンのノートにスケッチしながら旅しているとのこと。ひとつの風景をスケッチするのに最低一時間。それだけの時間、目に映るものをペンを通して残していったら見えている景色もまた違ったものに思えてくるのだろうな。尊敬するよ。デジタルカメラになってとりあえずシャッターを切って記録しているだけの自分がとても軽薄に思えてきた。

夜は街の真ん中にあるB&B、ミルザ・ボシ(Mirza Boshi)のレストランでウズベク料理を食べる。ちょうど夕暮れ時の街のようすが幻想的で目に焼きついた。考えてみたらほんの150年くらい前まではこの地はまだまだ秘境で、残虐なエミールがイギリスやロシアからの使者や旅人の処刑を繰り返し、街には奴隷があふれていた場所なんだよね。そんな歴史を考えると、この夕焼けも幻想的というよりもおどろおどろしいものに思えてきた。

この夜、モイナックまでの同行者が見つかったので、明日は一日かけてアラル海へ行ってきます。

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Written by shunsuke

2011年9月11日 @ 11:54 PM

カテゴリー: 2011/08 Uzbekistan

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コメント / トラックバック3件

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  1. スケッチをしながら旅行するなんて素敵ですね。
    絵がかけるってうらやましいです。

    でも、しゅんさんみたいな写真も撮れないので、私にしてはとても羨ましいんですよ。
    いつも見知らぬ景色をありがとう。

    Herry

    2011年9月12日 at 9:33 AM

    • > ヒロコさん
      1秒もかけずに写真を撮ることができるのに対して、1時間近くかけて1枚のスケッチを描く。それだけでその場所との結びつきが強くなる気がいたします。

      同じ写真でもフィルムで撮影していた頃は少し違いました。多少は手によるスケッチに近い感覚があったかな。2008年くらいまではフィルムカメラで写真を撮っていたのですが、デジタルになってから1枚の写真の重みが軽くなったような気がいたします。

      大量生産された写真、という感じです。もっと一枚への情熱、一枚一枚の写真に対して真摯に接していきたいなとは思っています。

      shunsuke

      2011年9月16日 at 4:44 AM

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