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あなたは部品ですか?それとも人間ですか?

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今年で社会人6年目、つい先日12月1日付でまた新たな辞令が出て、研修も含めると6回目の部署異動になった。6年目ともなれば、会社の体質がわかってきて、できることとできないことがはっきりとわかってくる。特に去年の後半から歯車がうまく回らなくなっていて、今年の秋にはもどかしさが頂点に達していた。そんな時に、池井戸潤さんの「鉄の骨」を読んだ。

ゼネコンの建設現場から談合の現場に異動になり、自分の理想を抱きつつも業界の現実を知らされ、理想と現実の狭間で揺れ動く主人公。主人公の彼女が、同じ職場の先輩に惹かれていく姿も含めてまるで少し前の自分を見ているかのような話だった。心の弱いところをほじくり返される、そんな感じ。そんな話の中、主人公の同僚が吐いたこのセリフがぐさっと心に刺さった。

「サラリーマンは部品だ。だけど、単なる部品じゃない。同時に私たちは人間だ。サラリーマンである以前に人間なんだ」その通り。組織としての論理や理屈も大切だけど、それ以前に感情を持った人間として関わる人と接していきたい。人間としての尊厳と矜持を大切にしていくことができる人、組織と共にワクワクする時間を共有していきたい。この言葉で、自分の中で大切なものの位置づけがはっきりした気がした。大げさかもしれないけど、すっと肩の荷が降りた気がしたんだ。

この言葉を心に留めながら、来年はそろそろ仕事で目に見える形で結果を残していきたい。貪欲に言うべきことは言い、周到に準備をし、何とか頭の中で描いたことを実現させたい。会社のお金と名前を使って自分がやってみたいなと感じたことを形にする、僕はそのためにサラリーマンになったんだ。

「何のために仕事しているんだろう?」そう悩んでいるアナタ、「空飛ぶタイヤ」「鉄の骨」「下町ロケット」大企業に立ち向かうサラリーマン三部作、おすすめです。

空飛ぶタイヤ
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池井戸 潤
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鉄の骨

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下町ロケット
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池井戸 潤
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Written by shunsuke

2011年12月24日 at 10:56 AM

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国はあなたのことなんてこれっぽっちも考えていません

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外国にいると、国家について考えさせられることが多い。とりわけ、仕事で政府関係の人たちと接することが多かった南寧ではその機会が多かった。国民を戸籍で区分し、インターネットの情報をコントロールする。国が国民を愛しているようにはこれっぽっちも思えない中国なのに、国への愛を口に出す人は実に多い。翻って、僕は日本という国を愛しているのだろうか?日本人を愛しているのだろうか?日本は僕を愛してくれるのだろうか?何度もこれまで自分に問いかけてきたそんな言葉が、帚木蓬生(ははきぎほうせい)さんの「逃亡」を読んでまた浮かんできた。

召集されて赴いた中国大陸で憲兵となり、香港、広州で活動をしたのちに終戦を迎えた主人公の話。終戦後に武装解除が行われ、真っ先に逃げ出した軍人、身一つで逃げ出してきた民間人。憲兵は中国人たちの怨念を一身に受ける人身御供として、治安維持の名目で大陸に残り続けることが命令された。

その状況を察して、主人公は武装解除の前夜に組織を離れ民間人に名前を変えて帰国するも、戦犯として手配されて日本国内で逃亡生活を送ることになる。逃亡中に蘇ってくる香港の憲兵時代に摘発し死に至らしめた相手方のスパイの記憶。軍の命令で行ったスパイの摘発も、相手は非戦闘員である時点で戦争犯罪となる。

国によって徴兵されて戦地に赴き、軍隊の命令で行った憲兵としての行為が罪に問われる理不尽さ。その一方で終戦後、日本の旧占領地各地で行われた戦犯裁判、世に出ることがないB・C級戦犯に対する扱い、その中で裁かれていった憲兵たちの姿が直接・間接に描かれていく。

「一人殺せば殺人者で百万人殺せば英雄となる」チャップリンはそう語ったけど、まさにこの状況のことなんだよね。国なんて守ってくれない。ちょこっと状況が変われば手のひらを裏返したように、敵に回る。リビア国民という愛する息子たちに下水道管から引きずり出され最後を迎えたカダフィ大佐の姿が少し主人公にかぶった。彼も自分自身が国そのものだったはずなのにね。

戦犯を逃れた天皇陛下と、殺されたカダフィ。比較が強引なのは承知の上で、戦いの後の二人の姿があまりに対照的。反共との思惑があったにせよ、天皇陛下を許したアメリカはすごいよね。親族を殺された人たちからすれば、相手の親玉なんだから。天皇陛下万歳の方々にはソ連に感謝する必要があるはずだ。

ところで、この帚木さん。本業は医者とのこと。医者と作家って相性がいい。古くは森鴎外、斉藤茂吉、北杜夫。最近では「チームバチスタ」の海堂尊さんもそうだ。人の身体や心の病を治療していくことと、物語をつくりそれを言葉に置き換えて表現していくってことは意外に近い作業なのかもしれない。

考えてみればそうだ。外科にせよ内科にせよ、年齢や性別、身長や体重、食生活が異なれば同じような病巣であっても対処方法は異なってくるから、まったく同じ病状は一つとして存在しないはず。それはきっと一つのテーマに対して想像力を働かせて世界を築き上げていく作業に近いんだろう。コンサル的な論理的思考だけでなく直感的思考を交えた作業なんじゃないかな。

そんなことを考えた週末でした。本は全力でおすすめです。

逃亡

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Written by shunsuke

2011年10月30日 at 11:18 PM

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三浦しをん 「神去なあなあ日常」

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三浦しをん「神去なあなあ日常」を読んだ。元々2年くらい前に会社の友人から送ってもらったのに読むのを忘れていて、片付け中にたまたま手に取った。Hちゃん、せっかくもらったのにほうっておいてごめんよ。

物語は、18歳の少年が高校卒業後に三重の林業の現場に放り込まれる話。狭く濃密な社会でヤマと生きてきた神去村の人たちに戸惑いながらも、自然を相手にする厳しさと素朴さに触れ、次第に仕事の面白さに目覚めていく主人公。

自然と向き合って仕事をしている人たちにしてみればあまりうれしくない表現なのかもしれないけれど、仕事のひとつひとつや祭りの描写に、そこに生きる人のたくましさと優しさが伝わってきて微笑ましかった。結局、雪が降ったり台風来たらどうしようもない、なるように任せるしかないんだよね。これが自然に向き合っている人たちの優しさであり、強さであるんだと思う。この本の中のセリフを借りれば「なあなあ」なんだ。林業に関わる者の端くれとして書いてくれた作者に感謝します。

ところで、この本に書かれているように日本の林業は厳しい。北海道を除けば林業用地はどこも急峻な山地で、雪も降るし台風も来る。だけど、世界に目を向けると新興国では木材の爆発的な需要が生まれて、自国だけではまかないきれず希少価値となっている。インドはマレーシアやインドネシアから熱帯の原木を日本の1.3倍くらいの値段をつけて買い付け、中国では工場着100ドルで合板材が売られている。

一方、戦後65年を経て日本では35~40年前に一斉に植えられた木が成熟しつつあり、いびつな構造ながらも森林資源大国となった。だけど、どこに何を売るのがよいのかマーケティングが何もできていない。今ある資源からどんな製品をつくることができて、それをどこの場所に売ることができるのか。逆に言えば、世界のマーケットでは今後何の需要が伸びて、今日本にある資源でその需要を満たすどんな商品をつくることができるのか。それを考える時期に来た。そう、今が日本の林業にとって大チャンスなんだ。

神去なあなあ日常
神去なあなあ日常

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三浦 しをん
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Written by shunsuke

2011年10月5日 at 8:39 AM

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中山七里「さよならドビュッシー」

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中山七里の「さよならドビュッシー」。新刊で出たときにインパクトのある名前だったので、タイトルは記憶に残っていた。友人がすすめていたのを聞き、旅行前に成田の本屋で文庫本を見つけて読んだらこれが面白かった。

重度の火傷を負った15歳の女の子がピアノを通じて生きることを模索する物語。行間からピアノの音色が聞こえてくるような描写と、心揺さぶる表現が素晴らしい。稚拙な文章もあったりするのだけれど、ひとつひとつの言葉に書き手の魂がこめられているのがよく伝わってくる。

作中に主人公が「ドビュッシーの「月の光」を聞く場面でこんな感想をもらす。「音楽を聴いていたのにまるで一枚の絵を見、一遍の詩を読んでいるかのような感慨が残った」。僕もこの本を読んでいて、文字を追っていたのに、いつの間にか音楽を聴いて、音楽から飛び出してきた立体的な絵を見ているような感覚が残った。

この本の登場人物が活躍する「おやすみラフマニノフ」も早速読んでみよう。こうして新しく面白い本や作家を見つけたときのわくわく感を感じられるのは、本好きとして幸せなことだね。

さよならドビュッシー (宝島社文庫)
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中山 七里
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Written by shunsuke

2011年9月29日 at 8:06 PM

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森絵都 『風に舞い上がるビニールシート』

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ベネズエラへの出発前、成田空港の本屋でタイトルと表紙で思わず手に取った一冊。よく調べてみたら直木賞受賞作だったんだね。こりゃ、失礼しました。

森絵都さん、彼女の書く作品はなんでここまで読む人の心を和ませるのだろうか?6篇からなる短編集なのだけど、どれも読み手の心をソワソワさせつも最後には水戸黄門の印籠が出てくるかのようにすぽんときれいにまとまってしまう。うまいなあ。

一番好きだったのはクレーム処理に向かう出版社の主人公と広告主の若い男性のやりとりを描いた「ジェネレーションX」。まるで親子がキャッチボールをしているかのように、年の離れた二人が徐々に相手との距離を縮めていっていくようすが微笑ましかった。

ちょっと気分転換したいとき、小旅行に出かけて気兼ねなく本を読みたいとき、そんな場面にぴったりの一冊。おすすめです。それにしても彼女と荻原浩さん、今最高に乗っている女性作家だなあ。

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)
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森 絵都
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Written by shunsuke

2011年5月12日 at 10:30 PM

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有川浩の世界

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最近一番気になる作家が有川浩さん。2006年くらいから「図書館戦争」シリーズの存在は知っていて気にはなっていたのだけど、「明日の記憶」の荻原浩とごちゃまぜになって読む機会がなかった。そしてものすごく失礼な話なんだけど、ずっと男性と思っていた。

去年ようやく有川さんは「ひろ」で荻原さんが「ひろし」ということを友人から聞かされ、「阪急電車」と「レインツリーの国」を薦められ読んでみた。読んでみると登場人物の心の中の微妙な変化を会話やしぐさで表現するのがとても上手で、すぐに作品の中に引き込まれてしまった。

両方とも特に硬派なテーマを扱っているわけじゃないんだけど、日常の中のひとコマひとコマから物語が生まれてきて巧みな会話にリズムが刻まれていく。どんな平凡な日常でも自分の世界をつくってしまう、一言の言葉から何十個の物語を想像できる人なんだと思う。この人すごいなあ。きっとものすごく繊細で、小さい時から感受性が強くてなかなか同世代の友人に混じって遊んだりすることができなかったんじゃないかなと、勝手に想像してみた。

まだ二作しか読んでいないので、他の作品もぜひ読んでみよう。旅先や出張先で時間ができたときにパラパラと読むにはもってこいです。

レインツリーの国 (新潮文庫)
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Written by shunsuke

2011年3月26日 at 11:09 AM

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梨木香歩『西の魔女が死んだ』

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前から読もう読もうと思っていた「西の魔女が死んだ」を偶然南寧で手に入れて読むことができた。 去年映画化されていたので結構最近の本なのかなと思っていたけど、1994年にハードカバーの初版だから、もう15年も前の本になるんだ。
多感な主人公”まい”がおばあちゃんと一緒に暮らしていく中で、子どもから大人になるようすを描いているのだけど、温かくまいの成長を見守るおばあちゃんの優しさが行間にあふれ出していて、読んでいるこちらまでおばあちゃんの一言一言にうんうんうなずいてしまう。 「シロクマがハワイより北極で生きることを選んだからと言って、だれがシロクマを責めますか」この言葉なんて、紙に書いて机の前にでも張っておきたいくらい。
僕も小学校の時に学校に行きたくない時期があって、死んだあとどうなるとかその時祖父といろいろ話したっけ。主人公のまいを見ていると、まるで子どもの頃の自分を見ているようだった。
加えて、自然描写がうまい。まるで腐葉土の匂いが漂ってくるような、銀龍草の銀色の花びらが目に浮かんでくるような、そんなみずみずしい文字たち。文字から匂いや味、そして景色が浮かんでくるってすごい。
最後に会ったときなんでもっと優しく接してあげられなかったんだろう。物語の最後に、三年前の夏に僕の祖母が死んだ時に感じた後悔を思い出す場面があって、ちょっとうるっときた。ぽかぽか陽気の休みの午後、熱い紅茶とキッシュを用意してもう一度ゆっくり読みたい。
西の魔女が死んだ (新潮文庫)
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梨木 香歩
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Written by shunsuke

2009年11月8日 at 6:52 PM

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