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DAY5:やるべきことはやった、あとは登るだけだ。

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Climbing day 4: Barranco Camp(3,950m) – Barafu Camp(4,670m) 13km

4日目の朝、この日もほとんど寝付けずに6:30に目が覚めた。昨日しっかり上って下りたのにまだ身体が順応していないのか、丸二日間寝られていないことになる。幸いなことに頭が痛かったり、気分が悪かったりすることはなく身体はかなり軽い。

この日は翌未明のアタックに向けて早めに次のキャンプに着く必要があるためいつもより一時間くらい早く起床し、出発の準備をする。寝られていないこと以外はすべていたって順調。お通じもバッチシだ。このトイレもポーターが運んでくれ、水を入れれば水洗で流せるようになっている。もちろんトイレを囲むテントも排泄物もポーターが運ぶ。Larahaの話によると、このトイレ関係は仕事を始めたばかりの新米ポーターの役割らしい。そうだよな、トイレ運ぶよりかはテントとかのほうがいいよな。

7:30に予定通り出発。まだ谷に太陽の陽が射し込んでいない中を目の前の崖目掛けて歩いていく。途中小さな川を渡ったときに足を滑らせて右足がひざまで泥だらけになってしまった。氷河を源流にしているのでとにかく水が冷たい!朝からついてない。

50分かけて標高差200mくらいあるBarranco Wallを登り切る。崖の上からキャンプサイトを見下ろすと、この谷が氷河によって削られた侵食谷であることがよくわかる。そして上を見上げると迫力のある氷河が目の前に迫っていた。いよいよ頂上が近づいてきたぞ。

ここでETH Zurichの力学のスペシャリストMarkusと重力の話になる。彼いわく4,000mを越えているのだから酸素が薄くなることにより重力が小さくなることで、物理学的には身体は軽くなっている。だけど酸素が薄くなることによって肉体の運動機能が落ちているから感覚的には重くなる。結局平地と比べて軽いのか重いのか?ということで飛んでみた。

結果、飛ぶことについては確かに平地よりも軽かった。間違いない。だけど高く飛んだせいで右ひざを少し痛めた。アホか、俺。Markus、議論を振るのはいいけど自分も飛ぼうぜ。僕より若いんだし。

ここまでくるとセネシオ以外の大きな植物はほとんど目にしない。足元もいかにも火山ですよ!という感じのごつごつした岩だらけになっていく。そんな中僕らは黙々と歩を進める。右ひざ痛い・・・

そんな僕を横目に今日もポーターたちはすいすいと登っていく。彼らはもちろん登山靴なんてはかない。さすがにキナバル山のようにサンダルということはないけれど、みんなスニーカーで重い荷物を担ぎながら登っていく。

11:30、今日は早めに出発したこともあり、昼ごはんもいつもより早めにとる。1時間ゆっくり食べて砂糖たっぷりいれた紅茶でリラックス。歩いているときはもちろん薄着なのだけど、いったん止まると標高4,000mの風が容赦なく身体を冷やす。そんな中食事用のテントに入り温かくて甘い紅茶を飲むとほんと生き返るよ。もう外に出たくなくなるもん。やっぱり殿様登山最高。

あーもうこのままここでゆっくり休みたいなあ、なんて甘ったれた気持ちにムチを入れて午後ひたすら単調な景色の中を登っていく。もうセネシオもいない砂と石の世界。こんな目の前にドーンと高い壁が現れたら登る気なくすよ。

寝不足の僕だけじゃなく、他のメンバーも体調がすぐれない。ノルウェーからの二人LiseとKarinは高山病とぜんそくの症状が出ていて、スイスのMarkusは風邪が悪化している。ただ一人ドイツの元軍人Marcoだけは元気いっぱいだ。こういう時に10年の軍隊経験って強いよね。

しかも歩きながら聞いたところによると、彼は一週間山の中で食料なしで過ごすような特殊訓練もつんでいるらしい。「あの時は俺自身、自分が獣になったようだったよ」だって。そりゃ、これくらいなんともないよな。みんな足が重い午後の行程も彼は一人余裕顔。

15:00、ようやく本日のキャンプ地Barafu Campに到着!サイトに張られたテントのカラフルな色が見えたとたん、みんな急に陽気になった。みんな今日はがんばった!

さすがに標高4,500mを越えると風が強い。ガスが出ては消え消えては出て右から左へ流れていく。ここBarafu Campから眺めたキリマンジャロの最高峰Kibo Peak、明日はここからあの雲の向こうの頂上へ登っていくのか。いよいよクライマックスだ。

流れていくガスの中を鳥が気持ちよさそうに飛んでいた。僕らの身体はこんなに重いのに、なぜそんな軽々と飛んでいくのだろう。少し恨めしく思った。

明日朝0:00の出発に備え17:00に夕食。毎晩夕食の際にガイドリーダーのJohnが翌日のブリーフィングをしてくれるのだけど、今晩は少し特別なメッセージだった。

「喘息の症状とうまく相談しながらここまで来たKarin、高山病の症状も気力でやっつけてきたLise、風邪が悪化する中その気配を感じさせなかったMarkus、いつもみんなをフォローしてサポートしてきたMarco、そして皆を元気づけてきたShun、5人ともよくやった。ここまでくれば80%は登頂したも同じだ。やるべきことはやった、あとは登るだけだ。あとは我々がみんなを頂上まで連れていく。ゆっくりでも構わない、休み休みでも構わない、プロフェッショナルである我々がみんなを連れて行く。みんなであの頂に立とう!」

John、泣かせるなよ。話している内容は特別なことは言っていないのだけど、一言一言メンバーに伝えていく彼の話しぶりが心にしみて目頭が熱くなった。登頂前から泣いてどうする。でもみんな思うところがあるらしくじっと彼の言葉に耳を傾けていた。

彼には元々別のパーティだった僕とLarahaが合流したことを快く思っていなかった節があり、僕もあまりいい印象を抱いていなかった。だけど彼はすばらしいリーダーだ。この一言で僕らパーティの結束を限りなく強くしてくれた。

寝る前に目の前にたたずんでいたMawenzi Peakを目に焼き付けて寝床に入る。John、改めて勇気が沸く言葉をありがとう。

Written by shunsuke

2011年2月26日 at 10:18 午後

カテゴリー: 2010/10 Kilimanjaro

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