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土地の恵み

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この旅の間、毎朝必ずチャイを飲んでいた。中国人が真夏の暑い日でもお茶を手放さないように、パキスタンではとにかくチャイだった。朝起きて一杯、食後にも一杯。そして疲れたときは多めに砂糖を入れてもう一杯。さらに話がはずむともう一杯。カシュガルについてからもあの甘いミルクの味と、ほのかなカルダモンの香りがくせになってパキスタン人の店に入ってしまった。ソウルフードという言葉があるけど、チャイはきっとパキスタンのソウルドリンクだ。

よっちゃんに教えてもらったダウドスープは、フンザ名物のヌードルスープだった。シンプルな塩味なんだけど、羊のダシがしっかり出ていて印象深い味だった。もちろん初めて食べたのだけど、なんかどこかで食べたことのあるそんな素朴という言葉がぴったりくる懐かしい味だった。きっと何百年前からフンザの人々に受け継がれてきた味なんだろう。日本の家がぬかみそを受け継いできたように、フンザの家もダウドの味つけを受け継いできているのかな。

杏はパキスタン北部の名物。フンザでも村を歩くと谷のいたるところでオレンジ色の実がなっていた。フンザの子どもには絶好のおやつのようで、手の届く範囲の熟した実は全部子どもたちの餌食になる。少し賢いおばちゃんたちは朝あまり人がいない時間に長い棒を使って木をゆすり、落ちてきた杏の実を乾燥させて売っていた。

ダウドスープを飲んだローカルレストランでその杏たっぷりのアプリコットジュースも飲むことができた。出てきたグラスにはキンキンに冷えた完熟の杏が、100%ジュースというよりも杏をちょこっとつぶしただけの半固体がたっぷり注がれていた。日本の杏より甘く、完熟のいちじくに近い味。あーなんてぜいたくな飲み物なんだ。

土地が変われば土が変わる。土が変われば、味が変わる。きっと僕がパキスタンで味わったものも日本で食べたり飲んだりしたら全然ちがった味になるんだろう。風呂上りにこんなことを書いていたら冷えたアプリコットジュースがたまらなく飲みたくなった。

舌で味わったものを言葉で表現することは難しい。そしてほとんどの場合、主観的な味覚を他人と共有するのは不可能だと思う。だからこそ違う土地を訪れるたびに、その土からしかとれないものを味わうのは僕にとって楽しみであり、最高のぜいたくだ。

チャイ、ダウドスープ、そして杏。これらの味は、カラコルムの雪山と一緒にパキスタンの記憶としてはっきりと僕の記憶に残った。

Written by shunsuke

2007年8月8日 @ 10:57 午後

カテゴリー: 2007/07 Hunza

2件のフィードバック

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  1. フンザの旅日記はとても印象的でした。下手なコメントを書けないような。
    で、最後の今日の日記。飲み物や食べ物に凝縮された旅の記憶。
    その土地でなければ味わえないはずのものを口にしたような余韻でした。 

    裕子

    2007年8月9日 at 1:54 午後

  2. >ヒロコさん実はフンザの日記は最後ですが、旅日記はこれから国境越え、カシュガルへと続きます。旅はやっぱり食べ物ですね。旅だけじゃないですが、誰がなんと言おうと食べ物です(笑)ボッたくられようと、ダニにくわれようと、とりあえずおいしいもの食べられていたらもうそれだけで幸せです。

    Shunsuke

    2007年8月14日 at 3:45 午前


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