Archive for 6月 2010
DAY2: 大草原を突っ走り、ゲシェと出会う
夏河二日目。起きたら11時だった。前日にかなりハードな移動をしたせいか、休み前に仕事が忙しかったせいか、よっぽど眠かったらしい。もったいない!と嘆いてもはじまらないので、まずは腹ごしらえをしようと外に出る。ちょうど街の目抜きどおりで下水道管を埋める工事をしているらしく、とてもほこりっぽい。その上今日は厚い雲が空を覆っている。ああ、青い空が見たくてここまできたのに。
ここまで来たらチベット料理を食べないと、ということで昨夜と同じNomad Restaurantでチベット餃子のモモをオーダー。以前にカムやチベットで食べたモモはヤクの肉が臭かった覚えがあったのだけれど、ここのヤク肉はほんとに新鮮でおいしい。なんていうか臭みのない羊肉と柔らかい牛肉を足したような味でとってもジューシーだ。
「私たち午後にタクシーチャーターして近くの村に行くんだけど、よかったら一緒にどう?」3階にあるレストランの窓からラプラン寺をコルラするチベタンの姿を眺めていたら、ちょうど昨日蘭州からのバスで一緒だった中国人の女の子二人組にそう話しかけられた。典型的な南の訛りだったので、聞いてみると広州と湛江から来たとか。なんか南の言葉を聞くだけでほっとする。まだラプラン寺も見ていないけど、特に予定もないので一緒に行くことに。
さっそくチャーターするタクシーを見つけドライバーを待っていると、こじゃれたおっちゃんがスクーターに乗って話しかけてきた。街の人はチベタンでももうあまり民族衣装のチュパは来ていない。着ないの?と聞いたら、「あれは田舎者が着るものだ」とバッサリ。まあたしかにおっちゃんはおしゃれだ。チュパは家の中じゃ動きづらいだろうしな。
タクシーは夏河の街を出て西寧に続く道をどんどんと登っていく。腕時計の高度計が標高3,700mを示したところに峠があった。峠にはしっかり経文が巻きつけられたタルチョがはためいている。
峠を越えると、そこには一面の草原が広がる絶景が待っていた。ああ、曇りなのがもったいない!
草原で草をついばむ羊とヤギたち。けっこう色も形もばらばらなんだね。
中にはこんな立派な角を持つやつも。
道はしごく快適。ところどころに小さな、ときに大きな穴がぽっかり開いているもののしっかりアスファルトで舗装されている。と思ったら、いきなり目の前の道が工事中で行き止まりだった。おばちゃーん、工事終わらないの?と聞くと、おばちゃんはただヤクのえさの草を干していただけだった。結局われわれは遠回りをして、目的地に向かうことに。
そういえば、二人組に着いてきたけどどこに行くのかすらはっきり聞いていなかった。そんなこんなでまずは最初の目的地、甘加郷の八角城遺跡に到着。ここには500年前の清の時代に作られたという城壁が残る。500年前に城壁をつくったということは、その当時にここに攻め込まれる危険性があったということ。まったく誰が?
そんな疑問をドライバーにぶつけてみるも、もちろんまともな答えは返ってこず。まったく手のくわえられていない土の城壁の上に登って集落を眺めると、ちょうど羊の放牧から村人が帰ってくるところだった。どういう理由であろうと城壁がつくられて500年以上ここに人が暮らしてきた。きっと電気が通ってモノが増えた以外は、500年前からほとんど変わらない生活をしているんだろうな。
次は八角城遺跡の近くのゴンパを目指す。こんなはずれのゴンパにもしっかり入場料をとる人がいて、30元の入場料を請求された。ちょっと複雑な気分。一緒にここまで来た二人組のように比較的アクセスのいいこのあたりのチベットエリアには休みともなれば多くの中国人(おもに漢民族)観光客が一眼レフを片手に訪れる。そして豊かになった彼らが落とす現金は地元の人の貴重な収入になる。ゴンパが入場料をとるのも実に合理的なアイディアだ。
誤解を生むような表現かもしれないけれど、漢民族は他人の文化に対してあまり敬意を示さずズケズケと他人の家に土足で上がることが多いと僕は感じている。それが他人と自分とを測る尺度をあまり持たないせいなのか、単に異文化に身を置いた経験が少ないかなのかはわからない。だけど家でも土足だから、相手が家の中で靴を脱ぐかどうかを聞きもせず土足で上がるような、そんな感覚を覚えることが多い。そのような彼らが落とすお金が地元を潤すようになると、そこの土地が彼らにとって好ましい観光地にどんどん変わってしまう。夜中までガンガン音楽が鳴り響く雲南省の麗江しかり、広西の陽朔しかり。ヨソモノである僕にはまったく発言する権利もないのだけれど、ちょっと複雑だ。
2008年の3月にはここ夏河でも官製のプレスツアーの最中、チベット人僧侶による外国プレスへの抗議行動があった。ここを訪れる中国人旅行者は、あの時のチベット人の行動の裏には、日ごろの漢民族たちの敬意のない行動が積もり積もっていただろうことを忘れちゃいけないと僕は思う。そんな難しいこと考えずにオプマニメメフムだぜ。と若き僧侶。いや、おまえは金がほしいだけだろ。
次に車が向かったのはある湖。名前は忘れてしまったのだけれど、地元の人にとっては聖なる場所で毎年ここで儀式が行われているらしい。
経文がびっしりと書かれたタルチョが木にぐるぐる巻かれている。このタルチョの色にはそれぞれ意味があって、青が空を、赤が太陽を、緑が自然を表しているらしい。じゃ、白は?とドライバーに聞いてみるが返事が返ってこなかった。この国の人の適当さはどこに行っても同じようなものだ。僕も人のこと言えないけれど。
三か所を回ったタクシーは19時ごろに夏河の街に戻ってきた。宿の前に着くと、なんだか僧侶の一行が井戸端会議をしていた。気になったのでのぞいてみると、ちょうど四川省のアバ地方から講演のためゲシェ(博士)がやってきたところだったらしい。ここのラプラン寺は甘粛省のみならず青海省、四川省、チベット自治区から人が集まってくる。ここで勉強して地元に戻って活仏であるリンポチェやゲシェの教えを伝えるのだ。
ゲシェと話してみると、やっぱりとても普通語がうまい。そして物腰も柔らかくて気品と知性がにじみ出てくる。僕が日本人で広西に住んでいると告げると、「2か月くらいはラプラン寺にいるけれど、戻ったらうちの寺に遊びに来なよ」と言って袈裟の中から名刺が出てきた。名刺まで持っているとはさすがゲシェ。弟子にピントが合ってしまってごめんよ。
結局ラプラン寺の目の前に泊っているのに、この日は一歩も寺に入らなかった。明日こそはしっかり寺を見に行こう。
DAY1: 9年ぶりにチベットエリアへレッツゴー
端午節に青い空が見たい
卒業の季節
ライチの季節がやってきた!
6月に入りここではいよいよ夏も本番。ギラギラの太陽が容赦なく照りつける季節がやってきた。これがカラっとした暑さだったらまだ過ごしやすいのだけど、日本と同じく湿度が高い。朝からもわっと湿気がカラダにまとわりつき、少しでも外を歩くもんならすぐに汗がしたたり落ちる。エアコンのきいた室内から外に出るとメガネが曇ることもあるくらいだ。
そんな暑さの中、先週はずっと南寧を離れ、こんな感じのところを歩き回った。おかげで一気に肌も真っ黒。
外から宿泊先に戻る途中、道端でカラフルなパラソルが目に留まった。あ!ライチだ!そうそうここ中国華南地方はライチの原産地かつ名産地。5月から7月までとれたてのライチが日本では考えられない新鮮さで食べられる。
近づいてみると道端でさっきもぎとったばかりのライチがこんな感じで売られている。ライチの中にもいくつか品種があって手前のものと奥のものは種類が違う。ライチはなんといっても鮮度が命。丸一日経つだけですぐに味が落ちてしまうので、もぎたてを買うのが一番うまい(だから日本では冷凍がメイン)。これで500gたったの4元(60円ちょっと)。日本では食べられないもぎたてのライチがこの値段!
ライチを売っていたすぐ奥におばちゃんのライチ畑があった。こんな風にぶどうみたくまとまって実がなる。そりゃ新鮮なわけだ。もいだそのすぐ脇で売ってるんだもの。
たっぷり買ってさっそくホテルに戻る車内で食べてみる。南寧の街中で売られているライチよりも一回り大きい実の皮をむくと、中から甘い匂いと一緒にはちきれんばかりの実がプルンと飛び出してきた。まるでラテンのおねーちゃんのお尻のようなぷりっぷり。実は柔らかくて甘くて何にもたとえようのないおいしさ。こりゃおいしいや。日本で買うライチと比べたらまったく別の果物だ。たとえるならこんな感じ。
もぎたてのライチ>>>南寧の市場で買うライチ>>>>>>>日本で食べるライチ
楊貴妃が華南から西安まで早馬で運ばせたって話があるけれど、彼女の気持ちもわかるなあ。一度この新鮮な味を知ってしまったらなかなかやみつきになるよ。これから毎年この時期が来るのが楽しみだ。で、この時期に広東・広西に来るアナタ、ぜひもぎたてのライチをお試しあれ。